JAMDAブログ

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2009年01月13日

[  第37回 JAMDA 2008 海外視察NYレポート  ]

私は今回N.Y.は初めてでしたが、書物だけでなくネット等で情報が溢れている昨今、知識としてはそれなりに持っているつもりで参加しました。
行きと帰りでどのように感じ気持ちの変化があったのかをここに綴りたいと思います。

事前情報として、JAMDA のホームページから過去の海外視察レポートを閲覧し、ネットの書き込み情報からN.Yの歩き方を検索し、インテリアデザイン関係の書物をあさり、マンハッタンの地図を眺めてイメージトレをし、出発の朝をを迎えました。

【 12月18日(木)出国日 】

AM9:00に成田に集合

今回ご一緒する19名の方々と対面し、団結式を済ましいざN.Y.へ飛び立つ。
12時間かけJFK 国際空港に到着 この時点で時差があり、再び12月18日(金)9:00から始まる。
入国手続きを済まし専用バスを待つロータリーへ。気候としては調度札幌のような痛さを伴う寒さで、まだアメリカに来たという実感はないが、五感が反応する。
一番反応したのが“臭覚”。
鼻を突くような臭いではないが、日本ではないことを印象づけるには十分であった。
これは空港付近だけでなく、マンハッタンもニュージャージーも同じである。これが国の匂いなのであろうか。

先ずはクイーンズ地区へ。
広大な土地に墓地が拡がり、地震のないN.Y.なので成立する建築手法レンガ造りの建物が騒然と並ぶ町並み。
現在はミドルクラスの住宅街でブルーカラーの街だそうだ。一路ライフスタイルセンターと呼ばれる雑巾工場跡を利用したモール「アトラスパーク」へと向かう。
例年だとホリデーシーズンで賑わい駐車待ちの車で混雑しているはずだったそうですが、不況のせいで静かと言うよりも淋しささえ感じる人気の無さ。
商業施設のリサーチとしては格好の状況ではあったが、どんな客層がどんな風に商品を購入してるのかは見えづらく、臨場感にかけてしまったのが残念であった。
ディスプレイは、ホリデーシーズン真っ只中なこともあり、セール仕様が中心。
施設としては現在の日本のモールのいくつかはお手本にしたと思われる、中央にコミュニティモールを配置した中規模な作りであった。

再びバスに乗り込みベイサイドエリアへ向かい「サウスシーポート」に立ち寄る。
ここから見るブルックリン・ブリッジは壮大で、やっとアメリカに来たんだと思える光景で印象深いものであった。
その後、現在も工事中のグランドゼロを横目にチェルシー地区へ。現在N.Y.でもっともホットなポイントの一つである、ナビスコビスケット工場跡を利用した、食品中心の「チェルシーマーケット」食材を購入する店舗だけでなく、
随所に日本風に言えばイート・イン的なテーブルが設置され、人々が食事と会話を楽しむといった光景が目に付く。
精肉工場跡を利用したアパレルショップ中心の「ミートパッキング・ディストリクト」は、 こちらも外装はそのままのレンガ造りの建物を利用し、それぞれのショップが路面店とし て成立している。

精肉工場があった名残か、現在もこの近辺にはステーキハウスが連立しており、プーンと肉が焼ける匂いが漂っている。
そう!やっと解った!!JFK国際空港を出た時に嗅いだ匂いと一緒だ!!
まるで食文化が国を支配しているかのように思えた。一方で日本にも国の匂いがあるのだろうかと脳裏をよぎる。

ここで初日の視察は終了。宿泊先であるウェリントン・ホテルは、五番街からわずか2ブロックしか離れておらず、地下鉄とも隣接しており、とても便利な立地条件であった。
ディナーは「ジキル&ハイドクラブ」にてスペアリブを堪能。 添乗員の奥村さんの計らいで選ばれたお店で、パフォーマンスショーが行われており、やっと緊張した我々の肩の力を抜いてもらったひとときであった。

【 12月19日(金)研修二日目 】

専用バスにてニュージャージーへ移動。
先ずはアウトレットセンター「ウッドベリーコモン」を視察。
圧倒的な広大な面積を有するオープン形式のモールには一流ブランドのアウトレットショップが立ち並ぶ
マンハッタンより70kmほど離れた立地なのは、コンセプトを明確にし、顧客の購買動向を別け、ブランドイメージを守るといった戦略からできたそうである。

ここでとうとう雪が降り始める。オープン形式なので、雪が降りしきる中200以上ある店舗を巡る。
それぞれの店舗にはディスプレイはなされてはいるが、店内はところ狭しと商品が陳列されておりボリューム感で構成されていた。皆それぞれ買い物袋を脇に抱え集合場所へと戻ってくる。

続いて「ガーデン・ステーツ・モール」へ移動。雪の影響もあり移動に時間がかかってしまい視察時間40分という中、現在では日本でもメジャーになった “アバクロ”と、まだN.Y.でも数店舗しかない“ルール”を中心に視察。 先程のアウトレットとは違い、商品を魅せるといった店づくりがなされている。教科書のような手法がとられ、要所にVPポイントがあり、とても見やすい売場である。
商品のクオリティも内装の仕上げもさほど変わることもなく、どちらかといえば日本の方が仕上げに関しては上だとも感じるのに、何か日本とは違う魅力を感じる。
そんな違和感の中、本日の合同研修はこれにて終了。

再びN.Y.へ戻り各自自由行動へ移る。皆、ツアーから紹介されているオプションへ参加する中、私は単独行動を研修に参加することが決まった時から計画。 N.Y.を実感するには現地の文化に触れるのが一番だと思い、今回の研修趣旨とは違ったNBAを観戦することにしていた。
事前にN.Y.在住の知人に頼み、マジソンスクエアガーデンを本拠地とする、ニューヨーク・ニックスVSミルウォーキー・バックス戦チケットを購入。
国技でもあるバスケットボールを現地で観戦し、あの臨場感を肌で感じることでアメリカ文化の一つに触れてみたかったのである。
日本人特有の大人しい気質とは違い、会場全体が全身でバスケットを楽しんでいた。タイムアウトのほんの2分間でさえコート上ではショーが行われ、観客の視線を釘付けにするエンターティメント性など、どれをとってもUSAであり、
興奮してその夜はなかなか眠れなかった。

【 12月20日(土)研修最終日 】

本日は恒例となっている「ブルーミングデール百貨店」へ視察に向かう。 ここは公式訪問なので、マーケティング担当者と朝食を取りながらのミーティングをし、その後店内を案内してもらう。
ミーティングではコーディネーターの岩田氏の通訳を介しながらの質疑応答であったが、色々な話ができた。
一番日本と違ったのは『店づくり』であった。施工以外の企画からプランニングや設計まで内部スタッフで構成している事である。コンセプトやテーマカラーが決まれば、スタッフ全員が同じ考えを共有し、終始一貫してぶれずにプロジェクトが進むのである。
これは“ブルーミングデールはこんな店”という確固たるものがあるからできるのだと担当者が言っておられた。説得力のある言葉である。

今年のコンセプトは『60's』 テーマカラーは『green』。

これはファッションのトレンドからきたキーワードだと話されていた。

ホリデーシーズンとセール期間の週末と言うこともあり、店内は賑わっており、買い物を楽しむお客様が目立った。
商品を“買い”に来ているのだ。実に楽しそうに。

しかしここでも日本との差はあまり感じない。空間の構成も商品構成も日本が劣っている訳ではないし、B1のレストランフロアをメンズフロアにリニューアルするといった、日本でもなされているような改装をしている。
なのに何か日本とは違った魅力を感じてしまう。そんなモヤモヤとした気持ちのまま、現地解散となり自由行動に移る。

ここからは一人で歩いてみることにした。続いて訪れたのは「メーシーズ」
ここでも先程と同じような感覚になる。
テーマカラーは『red』。
ウインドであろうが上層階であろうが、どこを切っても『red』である。

店内のどこに言ってもコンセプトがぶれていない。
これはブランドよりも百貨店側の力が強いからだと推測される。○○ブランドが入っているメーシーズでなく、メーシーズに入ってる○○ブランドと言った位置づけなのであろう。
違和感が少しずつ解消しながら地下鉄にてソーホー地区へ移動する。

9.11 のテロ以来、N.Y.は安全な街に変貌しているようで、随所に警官が巡回し、地下鉄もとても安全な乗り物であった。ここはまた違った趣のある街ではあるが、やはりレンガ造りの建物が続く街並み。
その中にショップが入っているといった景観である。インテリアデザイン雑誌で見たことがあるショップが立ち並び、自分の目で見てイメージとスケールとが一致していく。
なるほどと感嘆しながら再び地下鉄を乗り継ぎホテルへ戻る。
時間は経つのは早いもので、もう最後の晩餐である。
ホテルの斜め前にある中華飯店へ向かう。
エスケー化工の岸さんのご好意でお酒が振舞われ、皆研修が終わった安堵感からか円卓には団結式とは違った笑顔が見ることができた。勿論、私もである。

宴もたけなわで解散になったが、ここにきてまだ満足せず他社の方々と街へ繰り出し五番街を歩きロックフェラーセンターのツリーとスケートリンクを眺め、展望台に登りN.Y.の街を一望する。

ここでずっと感じてきた違和感に対して自分なりに一つの答えにたどり着いた。

何にせよ、『コンセプトが明快』なのである。
国のコンセプト
街のコンセプト
人のコンセプト
しいては店のコンセプトまで。

N.Y.だけを見てUSA とくくってしまうのは危険ではあるがUSAというコンセプトの中に枝が生えて成り立っているような気がした。
それぞれの地区には歴史が浅くとも建築物がそのまま残され、街の景観を守っている。
衣食住はその中にはめ込まれて成り立っているに過ぎない。今回視察した数々の商業施設もそういった街の中に溶け込んでいた。 ストアコンセプトはその次の位置づけではあるが、末端のオペレーションシステムまで浸透しているのである。

五番街の交差点にはいつもの『雪の結晶』飾られ、街のどのビルにも、同じモチーフを使ったツリーで“クリスマス”を演出している。

百貨店のウインドディスプレイは、ブランドに依存するのではなく、それぞれの店舗のイメージを前面に打ち出し、先ずは自分達のコンセプトを明確にうったえかけている。
接客もそうである。接客を受けて感じたのは“もてなし”といったサービスはあるものの、一流ブランドでも決して“売ってやる”といった姿勢は微塵も感じられない。対等なのである。服装や肌の色では判断していないのだ。
これが多民族国家アメリカのコンセプトなのであり、店の姿勢でもあるのであろう。
全てに“役割り”があり、全てが“明快”なのである。

【 12月21(日)帰国日 】

早朝専用バスにてJFK国際空港へ向かう
これであの匂いとも“SA‐YO‐NA‐RA”である。帰路の飛行機の中、今回のN.Y.視察を思い出しながら、日本の現状を顧みる。
日本は確かに綺麗で繊細ではあるが、それぞれコンセプトがまちまちであると思えた。戦後急激に成長し、マネをすることで発展してきた国だからであろうか。直ぐに目新しい物に飛びつき、ブームが去ると見向きもしない。
一方では寺社仏閣を重んじ、奥ゆかしい精神に美徳を感じる日本。このギャップが実に難解な国“NIPPON”しかしこの日本の方が心地よく感じる私は、やっぱり日本人であると改めて感じた海外研修でもあった。

14時間かけ成田に到着し、先ず最初に“日本はどんな匂いなのだろう”と嗅ぐ

ん!?N.Y.と同じ匂いだ。

そう、私の服にはしっかりと『ステーキの匂い』が染み込んでいたのは言うまでもない。
最後に今回このツアーに参加できたことをうれしく思うとともに、添乗員の奥村さん・現地コーディネーターの岩田さんにお礼を言いたいと思います。
各社2名のペアーで参加されている中、私は単独参加でしたので様々なところで気配り、配慮していただき、現地では参考になるお話やアドバイスを頂き大変お世話になりました。
またチャンスがあれば是非参加したいツアーでした。

(株)七彩 本社クリエイティブセンター プランニングルーム課長 北川 典也

投稿日時:2009-01-13